「ハラルビジネス」中小に波及 訪日客取り込み、食品や土産物販売

 ムスリム(イスラム教徒)の戒律にのっとったハラルビジネスへの関心が、国内の中小企業にも広がっている。東南アジアなどからの訪日客増加を見込み、ハラル食品専用の工場を稼働させたり、ムスリム旅行者向けの土産物販売に乗り出す企業も出てきた。将来の海外進出も視野に、今後も参入企業が増えそうだ。  

 

今月初旬に千葉市で開かれたアジア最大級の食の見本市「FOODEX JAPAN(フーデックスジャパン)2014」。初めて設けたハラルをテーマにしたセミナーはいずれも大盛況。ハラル対応食品などを出展した日本企業も9社に達し、来場者の関心を呼んだ。

 

安全・安心を追究

 

「食の安全を追究していたら、ハラル食品に行き着いた」  ハラル認証を取得したしょうゆを国内向けに販売している食品専門商社の佐藤長八商事(東京都台東区)は、そう話し、安全性、信頼性を強調する。同社は今年1月、日本初のハラル食品専用の工場を、千葉市花見川区で稼働させている。

 

 もともと食の安全・安心に注力していた同社だが、ハラルの認証を得るには、アルコールや豚由来の原料を使用しないというだけではない。どこで、どうやって、誰が生産し、どんな原料を使用したかを、すべて情報開示しなければならない。そうした基準をクリアし、国内認証機関から認証を得たという。

 

有機食品の開発・卸業者のムソー(大阪市中央区)は、訪日旅行者向けにカステラ、せんべい、おかきを商品化して4月から空港やホテル、観光地で土産用として販売する。出口裕起社長は「オーガニック食品開発のノウハウはあり、ハラルへの対応は容易だった」と話す。

 

ムスリム人口は世界に16億人おり、なお増加傾向。食品だけで70兆円規模の市場がある。日本国内には約10万人が在住し、訪日旅行者は30万人とされる。東南アジアからの訪日旅行者は13年に100万人を突破。20年の訪日旅行者2000万人の目標達成に向け、今後、さらに増えるのは確実で、各社とも国内でのハラル需要増を見込む。

 

海外進出も視野

 

 

 一方、将来の輸出を目指す動きもある。有機農産物の生産販売のフィードイノベーション(秋田県大館市)は、昨年10月にオーガニック米のハラル認証を取得した。佐藤仰喜社長は「オーガニックは基準があいまいだが、ハラルは厳密な認証基準があり、高品質を世界に向けてアピールしやすい」と訪日旅行者向けだけでなく、海外への挑戦も視野に入れる。

 

佐藤長八商事は、国内認証機関だけでなく、マレーシア政府や中東向けにアラブ首長国連邦(UAE)の機関からの認証取得も目指している。

 

ハラルに関する調査・研究などのハラル・ジャパン協会(東京都豊島区)の佐久間朋宏代表理事は「和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたが、伝統的な和食はハラルに近い。日本食にもハラル対応が増えれば、より多くの世界の人に波及できる」と積極的なハラル対応を提案。ハラルに対応すれば、安全・安心なオーガニック食品としての需要増にもつながるとする。  

 

過熱気味のハラルビジネスだが、課題もある。需要を見越して国内では認証団体が急増。こうした“ローカルハラル”の認証には慎重な見方もあり、トラブルが起こらないとは限らない。特に輸出をするためには各国の正式な機関の認証取得が求められるが、中小企業にはハードルが高そうだ。

 

出典:サンケイビズ

http://www.sankeibiz.jp/business/news/140326/bsc1403262246005-n1.htm