来日客の誘致 隠れた魅力を売り込もう

来日する外国人旅行者を「年間1000万人」まで増やすという今年の政府目標が達成可能な状況になってきた。

 日本政府観光局によれば、7月の来日旅行者数は、前年同月比で2割近くも増え、単月ベースで初めて100万人の大台を超えた。1~7月の累計は595万人だが、この増勢ペースは今後も続くと期待されている。

 

 交通輸送、宿泊から飲食に至るまで裾野が広い観光業は、日本の景気回復に大きな役割を果たす。来日観光客増加の流れを確かなものとするためにも、国、地方を挙げた取り組みが欠かせない。

 

 来日客の急増は、年初来の円安効果が大きいが、従来の韓国や台湾だけでなく、東南アジア地域からの観光客が大幅に増えたことが効いている。日中関係の冷え込みで激減した中国人観光客の落ち込み分を完全に補った格好だ。

 政府は7月から、タイとマレーシアの旅行者に対して短期訪日の観光ビザ(査証)を免除し、フィリピンとベトナムの旅行者には、有効期限内なら何度でも入国できる数次ビザを認めた。その効果が早くも表れたといっていい。

 インドネシアなどのイスラム教徒向けに、豚肉を使わない料理を提供し、礼拝場所を確保するといった、きめ細かな対応で集客に成功した旅行会社も出てきた。各国の実情に合わせた売り込み手法をさらに工夫していきたい。

 

国際会議を含め、多様な国や地域から日本を直接見に来てもらうことは、国際社会における日本理解を深め、存在感を高める。来日客誘致の意義は大きい。

 観光立国を掲げる政府は、2016(平成28)年には来日外国人数を1800万人とすることを次の目標とし、さらに2030(同42)年には3000万人を目指すとする目標を成長戦略で定めている。その時点で、来日客が日本国内で消費する金額は年間4兆円にもなると推計している。

 しかし、日本の魅力は日本人自身が意外に見落としがちだ。世界遺産に指定された富士山や京都、奈良といった定番の観光地にとらわれない売り込みが必要だ。

 東京・築地の鮮魚市場など、従来は考えもしなかった場所に、外国人観光客の関心が集まっているのは好例だろう。

 この国の魅力を再発見し、自ら掘り起こす努力が欠かせない。

 

出典:msn 産経ニュース

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130825/plc13082503060005-n1.htm