外国人観光客の〝ドル箱〟ツアーになった京都・トロッコ列車 USJから流入…2年連続100万人突破の秘訣

京都の観光名所・嵐山と保津峡のある京都府亀岡市を結ぶトロッコ列車を運行する嵯峨野観光鉄道の年間利用者数が、2年連続で100万人を突破し、今年度は利用客が過去最高ペースで推移している。昨年12月末時点ですでに100万6906人。冬季休業のため今年1、2月は休業し、3月に運行が再開されるが、年間利用者が史上最高となるのは確実な状況という。円安を背景に海外旅行を敬遠した日本人観光客も増えているが、人気を支えているのは外国人観光客。いまや、旅行関係者から「外国人向けの京都ツアーでは、トロッコ列車が組み込まれないと売れない」というほどの人気ぶりだ。大阪でユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で遊んだ後、トロッコ列車を楽しむコースが〝ドル箱〟になりつつある。(塩山敏之)


2割は外国人観光客


 保津川渓谷沿い。春は満開の桜、秋は鮮やかな紅葉と、四季折々の景観を楽しみながら7・3キロを約25分かけて走るトロッコ列車。1時間に1本の運行だが、平成25年度の年間利用者は約105万人と、3年の開業以来初の大台を突破した。


 26年度はそれを上回るペースで利用客が増えている。大雨の影響で2日間休業した8月、寒波のためにやや客足が鈍った12月を除き、利用客が順調に伸び、25年度より1カ月早く100万人の大台を超えた。


 同社によると、約20万人が外国人観光客で、うち約7万人が台湾からの団体旅行客。香港や韓国、シンガポール、マレーシア、欧米などから訪れる人も多い。


廃線を活用、開業まで困難の連続…年20万人の予測、嬉しい“大外れ”


 JR西日本の100%子会社として開業した嵯峨野観光鉄道。JR山陰線の電化、複線化に伴い、廃線を利用して観光列車を走らせることになった。開業当初を知る関係者は「開業までは困難続きだった」と打ち明ける。


 きっかけは、京都の新しい観光資源として山陰線の廃線を活用できないか、という京都府の打診だった。トロッコ列車の運行は運輸省(現国土交通省)から認可され、平成2(1990)年11月に正式に開業が決まったが、開業期日が3年4月に設定され、準備期間はほとんどなかった。


 線路はすっかりさび付き、雑草は伸び放題。とても列車を走らせる状態ではなかった。社員たちは、線路や枕木を取り換え、草刈りに追われた。客車も木材などを運んでいた貨車をレトロ風のトロッコ列車に改造した。


 今では春の名物となっている満開の桜のトンネルも開業当時、長谷川一彦前社長(現顧問)らが中心になって桜の木を植えた。


 急ピッチの作業の結果、なんとか開業にこぎつけたトロッコ列車。当時、京都駅に勤務し、長谷川前社長と一緒に桜の木も植えたという坂口勇一総務課長は「当初は年間利用者数は23万人程度と見込まれていた」と振り返る。


 ふたを開けてみれば、開業初年度の利用者は予想の3倍となる69万人超という好成績。その後も右肩上がりに乗客数を伸ばしていった。


サービスにひと工夫


 人気の裏側には、社員の努力やアイデアもある。


 沿線で紅葉の見どころや景観の良いポイントでは徐行運転。社員が扮(ふん)した伝説の鬼「酒呑童子」が車内で記念写真に応じるなど、乗客へのサービスを怠らない。


駅売店でコーヒーを注文すると、「嵯峨野」のロゴが入ったプラスチック製のカップにコーヒーを注いでくれるだけでなく、「記念に持ち帰ってください」と、ポリ袋を一緒に渡してくれるというひと工夫も。


 「社員旅行でスペインに行き、列車に乗ったときに受けたサービス。社員のアイデアで自社でも実施することになった」(坂口さん)


台湾が最多


 外国人観光客で最も多いのは台湾からの乗客。社員たちが、台湾を中心に積極的な営業活動を進めた成果でもあるが、桜や紅葉という日本の四季を実感できるツアーとなっていることが人気の原動力になっているという。


 最近では、25年4月に名神高速の大山崎ジャンクション(JCT)-京都縦貫道の沓掛インターチェンジ(IC)間が開通したことが観光客増につながった。京都縦貫道の開通で、大阪方面などから亀岡市が高速道路で結ばれ、アクセスが飛躍的に向上したのだ。


 例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)などの大阪観光を楽しんだ外国人観光客が大阪で宿泊。翌朝、バスで亀岡市まで移動し、トロッコ列車に乗る、というツアーが増えている。


 昨秋、11月中旬以降の紅葉シーズンの前売り乗車券は売り切れ状態が連日続き、トロッコ嵯峨駅では連日、約15人分の立ち見の当日券を求める長い行列ができた。


 森泰藏社長は「午前9時35分の亀岡発の列車はほとんどが台湾からの団体客で満席といっていいほど。台湾ではトロッコに乗って嵐山を散策するというのがツアーの定番になっているようだ」と話す。


また、円安で外国人の訪日旅行が割安になったことに加え、東南アジアからの訪日客へのビザ発給要件が緩和されたことも外国人観光客の増加を後押ししている。


 一方、円安で海外旅行を敬遠した日本人観光客の利用も急増している。


 森社長は「嵯峨・嵐山や亀岡など沿線の資源をお借りする形で商売しているのはありがたいこと。地域の人たちにどう恩を返していくのかが課題だ」と話している。


出典:産経ニュース

http://www.sankei.com/west/news/150113/wst1501130004-n1.html