外国人客狙い文楽PR、観劇クルーズも登場

「船上での文楽観劇」を目玉にしたクルーズや英語字幕付き上演……。2020年東京五輪・パラリンピックを前に急増する外国人観光客らをターゲットに、大阪発祥の伝統芸能・人形浄瑠璃文楽をPRし、観客として取り込む動きが広がっている。文楽の本拠地・国立文楽劇場(大阪市中央区)では「五輪開催は、文楽に触れてもらう絶好の機会」と捉えている。

 

 今月12日、国立文楽劇場は、外国人観光客や留学生ら約600人でにぎわった。英語の字幕付きで上演する初めての企画「Discover BUNRAKU」。浪曲師・春野恵子さんが太夫、三味線、人形遣いの役割を解説し、舞台上部のスクリーンに英語で字幕を投影して「夏祭浪花鑑かがみ」などが上演された。

 

 会場では、フランス語、中国語など5か国語表記のパンフレットや、3か国語対応のイヤホンガイドを無料配布。フィンランド人留学生(17)は「人形を3人で動かす仕組みが面白い」と満足した様子だった。

 

 大阪観光局によると、大阪府を訪れた外国人観光客は2011年に158万人だったが、15年には716万人に増加。近畿経済産業局が、東アジアからの旅行者約400人を対象に実施したアンケート(14年)では、日本で楽しみたいエンターテインメントに約48%が「伝統芸能」を挙げ、関心の高さをうかがわせる。

 

 国立文楽劇場の英語のイヤホンガイド利用数も、11年には653台だったが、昨年は1204台に倍増。劇場は今月から、文楽の歴史や演目の見どころをまとめた小冊子の英語版の配布を始めた。農端徹也支配人は「五輪開催は日本の伝統文化を知ってもらう好機。外国人向け公演は、定期的に行いたい。外国人へのアピールが、国内でも文楽の魅力を再発見するきっかけになれば」と意気込む。

 

 クルーズブームのさなか、文楽観劇を売り物にしたクルーズも登場する。郵船クルーズ(横浜市)が2月から募集を始めた「文楽クルーズ」。12月に日本最大級の豪華客船「飛鳥2」(5万142トン、872人)で横浜港を発着する2泊3日の旅で、14人の文楽演者が乗船する。

 

 船内の特設舞台で「日高川入相ひだかがわいりあい花王ざくら」などを上演し、体験講座や写真展も開催する。狙いは知的好奇心が旺盛な富裕層で、旅行費用は1人約10万~48万円。同社の担当者は「クルーズと文楽双方のファンを掘り起こしたい」と期待をかける。

 

 乗船する人形遣いの吉田玉男さんは「人形遣い体験など、文楽三昧の時間を過ごしてもらいたい」と話し、演者が所属する文楽協会の三田進一事務局長は「ポスターやチラシが目に触れることで劇場に足を運んでもらうチャンスも広がる」と歓迎している。

 

出典:読売オンライン

http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20160618-OYO1T50027.html