フランスで開催中「ジャポニスム2018」活用 官民一体で文化大国・ニッポン発信へ

日仏友好160周年を記念して7月からフランスで開催されている「ジャポニスム2018」の会期も後半に入った。日本政府主導で日本が誇る文化・芸術を、世界の文化都市パリを中心にかつてない規模で紹介、「文化大国・ニッポン」を来年2月までアピールする。この一大イベントについて河野太郎外務相と、民間からオフィシャルパートナーとして積極的に関与するパリ日本文化会館・日本友の会の早川茂会長(トヨタ自動車副会長)が対談した。文化大国に向け、河野氏は「持続的な情報発信が必要。民間が支える文化会館のやり方は手本になる」と評価。早川氏は「文化会館への参加価値を可視化し会員を増やしたい」と応じた。

 

 

--政府にとってジャポニスム2018の位置づけは

 

 「官民一体となって日本文化を発信していくイベント。日本文化の原点ともいうべき縄文文化から、フランス人に人気のマンガやアニメ、さらには最新映画まで紹介する。訪日外国人観光客を2020年に4000万人まで増やすには文化が大きな要素となる。それだけに展覧会や舞台公演などを通じて日本文化をイメージしてもらうことが大事だ。おもてなしやクリーンな自然環境など日本の良さを分かってもらう絶好の機会でもある」

 

 --伝統だけでなく最新技術も発信している

 

 「(世界中で話題の展覧会を創り出すテクノロジスト集団)『teamLab』の最新技術には多くの観客が集まり、パリ・エッフェル塔を特別にライトアップする企画にはパナソニックなどが協賛した。日本の歴史や伝統だけでなく、最先端技術を見せることも開催の狙いだ。こうした技術と歴史、伝統の融合を政府と民間が一体となって取り組むことに意義がある」

 

 --欧州に日本文化は根付いている

 

「19世紀にフランスに紹介された日本文化を取り込んだのがジャポニスム。葛飾北斎から刺激を受けた絵画のほか、デンマークには日本刀のつばをコレクションしている美術館がある。欧州にある日本文化を日本に紹介することも大事で、こうした美術品をメンテナンスしたり修復したりする技術を伝えることも必要になってくる。文化会館は日本文化の情報発信に加え、この担い手としても大きな役割を果たしてもらいたい」

 

 --官民一体となった文化発信については

 

 「日本は経済大国だが成熟していく。だからこそ文化大国・ニッポンを発信していくことが重要で、外交を考えても大事になってくる。厳しい財政事情から文化予算を増やせない中では民間の協力が不可欠で、ジャポニスム2018でも協賛していただいた企業にお礼を言いたい」

 

 --文化会館とそれを支える日本友の会への期待は

 

 「文化会館は日本文化発信のフラッグシップでありモデルケースだ。日本文化を海外に紹介する一つの手本といえる。日本政府は6月、日本の多様な魅力や政策を発信するジャパンハウスをサンパウロ、ロサンゼルスに続きロンドンに開館した。政府の肝煎りで予算もかけたが、財政的に続けるのは難しい。文化会館は多くの民間企業が財政面から支援することで持続的に情報発信することに成功している。大勢が支えることに価値があり、ジャパンハウスの運営でもこのやり方を参考にしたい。期間限定のジャポニスム2018はいわば短距離走だが、文化の発信はマラソン。続けることに意味がある」

 

 

 ■企業価値の向上につながる

 

--ジャポニスム2018の評判は

 

 「日仏・日欧の文化交流を促進するとともに、相互理解のさらなる深化を目的に8カ月にわたり開催する。今世紀最大規模といえる日本文化・芸術の国際的祭典で、文化への理解度が高いフランスでどう受け入れられるかチャレンジングでもあったが、文化・芸術への好奇心旺盛なフランス人の評価も高く、成果をあげている。日本文化を多くの外国人に知ってもらうまたとない機会なので、残り期間も最大限活用し文化大国・ニッポンをアピールしていきたい」

 

 --この時期に開催した意義は

 

 「160周年の節目でもあるが、ジャポニスム2018を皮切りに19年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪・パラリンピック、さらに25年誘致を目指す大阪万博とグローバルに日本文化を発信する機会が続く。日本文化を世界に向け発信すれば、訪日外国人旅行客(インバウンド)を増やすことにもつながる。フランスはフランス文化にほれ込んだ観光客の誘致に成功、リピーターも多くインバウンドは定着している」

 

 --日本の注目度を高めるためにも文化発信が必要になる

 

 「今後ますます複雑化する国際社会の中で日本の影響力を増進するには、これまでの経済力で世界の信頼やリスペクトを得るだけにとどまらず、文化でもアピールしていく必要がある。誇れるものがあることを日本はもっと認識し広めるべきだ」

 

 --民間企業に求められることは

 

 「日本文化に世界が好意を持ってもらうとビジネスにも有利に働く。文化発信は持続可能性などを志向する企業経営にとって親和性が高く、その意義は極めて重要になってくる。世界的に浸透しつつある社会的価値と企業価値の両立を目指すCSV(共通価値の創造)経営の実践でもあり、株主などステークホルダー(利害関係者)への説明責任も果たせる。文化発信に積極的な企業は中長期的に企業価値が高まるはずだ」

 

 --文化会館とそれを支える日本友の会への期待は大きい

 

 「ジャポニスム2018で、文化会館は多くの企画の会場としての機能に加え、全体の情報センターであり統括する役割を任されている。このように文化会館は重要な役割を担っており、財政面から支える日本友の会に参加・関与する企業を増やす必要がある。今回の祭典を機にその流れをつくるのがミッションでもある。そのためにも参加価値の可視化が重要になる。官民協同による文化会館と日本友の会の活動が官と一体となって、将来的に世界からリスペクトされる文化大国ニッポンの実現につなげたい」

 

 

【用語解説】パリ日本文化会館

 

 パリ・エッフェル塔近くのセーヌ河畔に建つ世界最大の日本文化センター。1997年の開館以来、展示や講演、シンポジウムなどを通じて日本の伝統、芸術、最新情報などの日本文化を発信するとともに、交流の場を提供。「日本友の会」は日仏・官民協同の理念を継続的に具現化していく日本側の民間組織として98年に発足、会館の活動を支援している。

 

【用語解説】ジャポニスム2018

 

 パリ内外の100近い会場で、日本政府主導により展覧会や舞台公演に加え、食や祭りなど日本人の日常生活に根差した文化をテーマに8カ月間にわたり紹介する交流イベント。2016年5月に安倍晋三首相とフランスのオランド大統領(当時)の合意により、日本文化の素晴らしさを世界へ発信する取り組みとして実施が決定した。

 

出典:産経Biz

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/181116/mca1811160500002-n1.htm