カテゴリ:通訳案内士



2016/12/02
インバウンドが急増する中で、従来の旅行業法や関連資格が現状に合わなくなっている。規制緩和などの見直しが進んでいるが、その中で注目を浴びている国家資格が「通訳案内士」だ。これは、外国人観光客に対して報酬を得て通訳ガイドを行うことができる資格で、外国語スキルに加え、日本の歴史や地理、文化についても精通していることが求められる。ニーズは増加しているが、現在約2万人の有資格者のうち稼働しているのは4分の1程度。背景には低価格を売りにしたツアーでは添乗員がその役割を担うこと、大手旅行会社も新規委託のリスクを避けてベテランだけを採用するなどの理由があるようだ。  このような状況もあって、政府は国家資格がなくても有償通訳ガイド業務ができるよう規制緩和を行う方針で動いている。それに先駆けて、業界に風穴を開けたのが「トラベリエンス」だ。ガイドする通訳案内士の質の高さをウリとしたツアーの販売を手始めに、訪日外国人と通訳案内士のマッチングサイトを立ち上げ。口コミで高い評価を受けた施設に送られるトリップアドバイザーの「Certificate of Excellence」を14年から毎年受賞するなど、創業4年目にして多くの訪日外国人の取り込みに成功している。  トラベリエンス代表取締役社長の橋本直明氏によると、起業の原点は学生時代のバックパッカー旅行。10年間の会社員生活に終止符を打って実現させた9カ月の世界放浪の旅にある。30以上の国を訪れ様々な現地ツアーを体験するなかで、知識の幅が広く、コミュニケーション能力の高いガイドが案内するツアーは一生心に刻まれる思い出になった。  帰国後の13年、“もっと知れば、もっと旅が楽しくなる”をコンセプトにトラベリエンスを創業。その後、訪日外国人と通訳案内士のマッチングサービス「トリプルライツ」、オンライン旅行ガイドブック「プラネタイズ」、通訳ガイドのスキルを学ぶEラーニングサービス「通訳ガイドアカデミア」を立ち上げている。 ■重要なのは通訳ガイドの質、会話能力を見極める  トラベリエンスの創業時のスタッフは、橋本氏のほかは業務委託の通訳案内士が数名。自身で外国人に人気の浅草を中心に東京を歩き回り、ツアー内容を考えるところからスタートした。「自分が外国人だったらどういう旅をしたいかと、これまでの旅の経験と照らし合わせて考案しました」と話す橋本氏。公共交通機関とウォーキングを組み合わせて移動するツアーに特化し、そこが「地域の人々の暮らしや文化に触れられる」とツアーの人気に繋がったが、実は当初は取得していなかった旅行業資格なしで営業するためでもあったそうだ。  中でも、ツアーの立ち上げに必要となる通訳案内士の採用には苦労があったという。「コストはかかりますがエージェントも使って、質の高い通訳案内士を探しました。今も採用活動は続けていますが、現状では10名と少数精鋭です」とのこと。その上で面接後には、模擬ツアーを実施して、そこで資質を見極めている。 「語学力と幅広い知識はもちろん、観光客が欲しているものを察知して提供できる能力を重視しています。例えば、この話に興味がなさそうだなと感じたら、他の興味をひきそうな話をしてみる、というような部分ですね」 ツアーの申し込みに対して通訳案内士が足りず、お断りするケースもあるというが、そこまで質にこだわるのは“いいガイドによるツアーは絶対に売れる”という確信があり、海外マーケティングでは口コミが国内以上に大きな力を持つからだ。 「まずはインターネットで検索した際に露出しないことには始まりません。SEO対策やブログなどに加え、やはりトリップアドバイザーは強いです」 ■トリップアドバイザー集客に貢献した“無料ガイドツアー”  トリップアドバイザーに投稿、認知してもらうため、橋本氏が当初行ったのが無料の浅草ツアー。1~2時間の浅草ツアーを設定し、通訳案内士にスタンバイしてもらい、橋本氏が自ら外国人への声かけを行ったという。このツアーには一日平均5組ほどが参加した。最後に「トリップアドバイザーにレビューよろしく!」と参加者に依頼し、ツアーの様子を見ながら少しずつ有料化。内容もニーズに合わせて細分化していったという。  こうした活動が実を結び、今ではトリップアドバイザーからの客は6割近くになった。ただ、1つの販売チャネルに6割もの集客を頼っている状況はリスクが高い。そのため、ニューヨークやロサンゼルスのトラベルフェアに参加するなど、自社でも集客できるような努力を重ねているという。現在6名いる社員の国籍がタイ、アルゼンチン、ブラジル、台湾と多様なのも、英語やその他の言語での検索が上位にくるSEO対策とPRを狙ってのこと。ウェブ作成においても彼らのセンスを取り入れ、外国人に訴求力のあるデザインを意識している。  また、集客の部分ではターゲットを欧米人富裕層に絞った点も、成功の理由といえるだろう。外国人観光客の受け入れ先進国である欧米の人々は、旅行先で自国と同様のサービスを求める。そして、サービスを受けることに対して、富裕層はお金に糸目をつけない。同社のツアー単価は総じて高いが、アメリカを中心に欧米客の問い合わせは増加しており、現在の稼働ツアー数は1日約7~10本ほど。滞在日数と宿泊場所、訪れたい観光スポットを事前に確認し、ツアーをオーダーメイドする場合も多いそうだ。 ■ターゲットは富裕層、関連ビジネスにも商機が  トラベリエンスではツアー単価が高いことに加え、ツアー事業を軸にそこから利用者のニーズを汲み取り、それに紐づく新たなサービスを展開してきた。収益については「4年目にして先行きが見えてきた」といい、現在も新たな事業を考案中とのことだ。  「海外マーケティングは今なお手探り状態。利用者のニーズを見ながらサービスを磨いています」と橋本氏は話している。インバウンドにおいては、まだまだ試すべきアプローチは多く残されているとのこと。低価格路線で苦戦しているツアー会社が少なくないなか、ターゲットを欧米人富裕層に絞り、高付加価値・高単価で販売するという手法で躍進している同社に見習うべき点は多い。  今後、規制緩和によって資格が必要なくなっても、口コミでユーザーが増えていくインバウンドの傾向を考えると、やはり重要なのはガイドの質。特に、観光客の顧客満足度を向上させるような接客スキルが無ければ、リピーターはもちろん、新規顧客の増加も見込めない。ホテルや観光コンテンツホルダーにとって、通訳やガイドといったサービスの提供は、副業としての収益のほかに集客の側面も期待できる。それだけに、安易にサービスを始めることなく、まずはサービスを任せられるだけの通訳を見つけることを第一に着手したい。 出典:HANJO HANJO http://hanjohanjo.jp/article/2016/12/02/6820.html
2015/11/13
大阪市内から関西国際空港行きの電車に乗ったつもりが、和歌山方面へ行ってしまう外国人旅行客が相次いでいる。JR西日本の「関空快速」と連結している「紀州路快速」が途中の日根野駅(大阪府泉佐野市)で切り離され、和歌山に向かうことを知らずに乗ってしまうためだ。間違いに気づき、大慌てでタクシーで関空に引き返すケースも少なくないという。そんな状況を見かね、同駅で乗り換え案内をボランティアで続ける男性がいる。片言の英語で案内した外国人は5カ月間で2千人超。外国人の旅行客は増えており、男性は「1人でやるには限界がある。JR西は対策を考えてほしい」と訴えている。 (中井美樹) 身ぶり交え…ボランティア  今月7日、日根野駅で、慌てた様子の外国人が紀州路快速の車両から飛び降りてきた。寄り添うのは大阪府泉南市の追田(おいた)清文さん(80)。「カム、カム」と手招きしながら、前方の関空快速の車両までホームを一緒に走る。15分ほどすると次の列車が到着し、間違っている乗客を探し始めた。  追田さんが案内を始めたきっかけは今年3月、天王寺駅から紀州路快速に乗ったときのこと。  和歌山へ向かう最後尾の車両に大きなスーツケースを抱えたアジア系の男女4人が乗っていた。日根野駅に近づいても席を立つ様子がない。思い切って片言の英語で声をかけ、身ぶりを交えながら、「この車両は和歌山行きだ」と伝えると、相手ははじめけげんな表情を浮かべていたが、はっとしたように立ち上がった。手招きする追田さんについて無事、関空行きの車両に乗り換えることができた。  翌月も同じようなことがあった。「これだけアジアから旅行客が増えているのだから、乗り過ごして困っている人はたくさんいるのでは」。そう思うと居ても立ってもいられなくなった。 2千人超! JR西に訴えたが…  「天王寺駅で駅員に対策を訴えてみたが、相手にしてもらえなかった」と追田さん。そこで、通訳をしているめいの手を借りて説明の図を作り、日根野駅で案内を始めた。  一方で、JR西に改善を働きかけるにはデータが必要だと考えた追田さんは、乗り間違え人数を記録。6月末から10月初旬までほぼ毎日、午前9時半から午後2時ごろまでチェックすると計2175人になった。  10月19日、JR西本社にまとめたデータを持参し対策を講じるよう要望。今も旅行客が多い土曜日を中心に週に2日ほどホームに立って案内を続けている。  ホームに冷たい風が吹き込み、電車を待つのはつらい季節になってきたが「乗り過ごして困っている人が今日もいるかと思うと、家でも気になってしまって」と苦笑いする。 “協力者”…広がる“おもてなし”の輪だが  先日、女性に「いつもご苦労さま」と声をかけられた。立ち話をしたところ、女性は追田さんに触発され、乗り間違えの外国人を案内したという。 追田さんは“協力者”に喜ぶ一方、JR西に早く対応してほしいと願う。「旅の最後で行き先を間違えるなんて、楽しい気分が台無しになってしまう。おもてなしの心があるなら改善してほしい」と話している。 出展:産経WEST http://www.sankei.com/west/news/151112/wst1511120043-n1.html
2015/04/24
日本を訪れる外国人旅行者の増加に伴って、有料で通訳ガイドができる国家資格の「通訳案内士」が地方を中心に不足していることから、観光庁は自治体の研修を受ければ地域を限って有料で通訳ガイドができる新しい制度の創設を検討することになりました。...