【福島の外国人旅行客 】震災前の半数以下 訪日ブーム陰で苦闘

東京電力福島第1原発事故の影響が残る福島県に、外国人旅行者が戻らない。訪日客数が全体として順調に増加を続けるのとは対照的に、福島県を訪問する外国人旅行者は震災前の半数以下にとどまったまま。事態打開の特効薬も見当たらず、県は危機感を募らせる。

 ▽厚遇

 「ようこそ、福島へ」。今月26日、福島空港。ベトナム語で書かれた歓迎の垂れ幕が掲げられる中、ベトナム発のチャーター便から降り立った約150人の観光客が次々と姿を見せた。

 福島県や栃木県、東京都をめぐる4泊5日の団体旅行で、ベトナム語のガイド本や福島県の特産品を手渡された参加者は、一様に笑顔だ。

 この「厚遇」ぶりには訳がある。今年4月以降、福島空港に着陸した国際便はチャーターの4便のみ。それも全てベトナムからだ。震災から4年以上経過しても、外国人旅行者の足は福島に向いていない。

 ▽0・1%

 観光庁によると、福島県に宿泊した外国人観光客は震災前の2010年で延べ約8万7千人。11年に震災の影響で約2万8千人まで急減した後、回復は鈍く、14年でも約4万2千人にとどまる。

 円安などを背景に、訪日する外国人旅行者数が急増している全体状況とは対照的だ。14年に訪日した外国人のうち、福島県に宿泊した旅行客は全体の約0・1%と、危機的な状況に陥っている。

 主な要因は、訪日客の上位を占める中国や韓国からの観光客が戻っていないことだ。

 震災前はゴルフといったレジャーを目的に韓国などから多くの旅行客が訪れていたが、福島とソウルを結んでいた国際定期便は震災と原発事故以降、ストップしたまま。県関係者は「中韓や香港では依然、福島への風評が根強く残る」と打ち明ける。

 ▽見えぬ道筋

 危機感を強める県は、比較的落ち込み幅が緩やかなベトナムやタイといった東南アジアの国々から旅行客を呼び込むことを狙う。海外からのチャーター便を誘致して実績をつくり、国際定期便復活への足掛かりとしたい考えだ。

 ただ、人気復活までの道のりは長い。県独自で通訳の育成も進められているが、需要がない状態。汚染水問題など収束が見通せない福島第1原発の状況が重い足かせとなっている。

 県の担当者は「長い闘いだが、海外の団体旅行客だけでなく、これまで手薄だった個人旅行客向けの働き掛けも強めていきたい」と話している。


出展:47NEWS

http://www.47news.jp/47topics/e/266604.php

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